夢の都
》終わらないパーティを夢で浮かぶ街
◆あんたのマンガ、ハッピーエンドが一つもないよね?
…と人に指摘されて作ったお話。
正確にはこれとかこれとかハッピーエンドだと思うんだけど、確かに少ない。
これは別に作者の性格がひねくれてるからというわけじゃなく、テーマを重視すると安易なハッピーエンドが思いつかないから。
自分のマンガは願望やコミュニケーションをめぐる話が多い。
ところが人生、そんなスムーズに願いがかなったり思いが伝わったりしない。
「かなわぬ願い・伝わらぬ思い」でみんな悩んでいるから、それが作品のテーマになる。
そしてテーマを問題設定とすると、こういう問題には正解がない。
「頑張れば夢はかなう」「真心があれば思いは伝わる」といった解答は一面では正しいけれど安易でもある。
安易な答えを避けると、どうしてもハッピーでもバッドでもない、ビタースイートな結末になってしまう。
なんのことはない。作者の人生観が反映されているだけだなこれ。
あれ? やっぱり自分はひねくれた性格なのかな?
◆元ネタがあります
ところでこの話には元ネタがあって、そっくり同じことを実際にやった人がいるんだよ!
この方は マーク・デヴィッド・クリステンセン(Mark David Christenson) というコメディアンだそうで、動画は2015年3月に公開されたもの。
アカデミー賞授賞式の夜、式の行われたハリウッドの街でタキシードを着てオスカー像を持ち受賞者になりすましたマークに市民はすっかりだまされる。マークの行くところあらゆるものが無料になり、とうとう自動車まで手に入れてしまう。
動画の最後、電話番号を教えてくれた女性に種明かしをするんだけど、彼女は怒るどころか「知ってたわ。いいからパーティにいらっしゃい」って言ってくれるの。
これを見た時、なんだかオー・ヘンリーの短編みたいだなと思った。夢をかなえた男はいなかったのに、いて欲しいっていう人々の願いが積み重なってそれ自体が一つの夢になる。
人間の願望の強さと切なさが浮き彫りになる、まさに夢の都ハリウッドにふさわしいいたずらだよね。