希望の本
》絶望を乗り越える花をくれた人
チェーホフ風の小品を目指した短編。季刊コミュポ13号初出。
絶望を乗り越える力はどこからやってくるのか。
人生は僕たちに苦悩を与えるたびに、それに打ち勝つささやかなヒントも一緒に与えてくれる。
自分を救えるのは自分だけだということ。
けれども自分だけを救おうとしてもうまくいかないこと。
人生がくれたヒントを正しく受け止めた者にだけ奇蹟が訪れる。
(以下、ネタバレを含む)
「チェーホフ風」って書いたけど、実は「チェーホフの銃」を意識しているよ。
これは「もし、第1幕から壁に拳銃をかけておくのなら、第2幕にはそれが発砲されるべきである。そうでないなら、そこに置いてはいけない」っていうチェーホフの作劇法を指す言葉で、伏線の説明としてよく使われる(WIKIPEDIA)。
じゃあ銃が出てきて、しかも発砲しないストーリーができないかな?って想像がふくらみはじめて、書き上げてみたら発砲どころが銃が消えるマンガができあがった。
一般家庭に銃が転がっててもおかしくないように、舞台は外国。スイスみたいな銃規制がゆるい国をイメージしてみた。登場人物が全員外国人ていうマンガを作ったのは初めてだけど、コミPo!は違和感がないね。作中では触れてないけど父親にはルカ、おばさんにはエマっていう名前がある。
このマンガ、一見リアリズムタッチに見えるけど、「ピストルはどこへ消えた?」っていう視点から見ると一転してミステリーになる。
可能性としては以下の4つ。
1 クロエが開いたのは別の本だった
2 ピストルは父親が処分し、本は全く同じものを再購入した
3 ピストルを隠した本など初めからなかった
4 花束が魔法でピストルを消してしまい、本の切り抜きも元に戻った
作者としてはこの中に正解はある。でも発表はしません。
メッセージが伝わった人にはわかるはずだから。