ユニコーンを見た日
》 幻の一角獣を見た日曜
いい大人が食べ物を粗末にするお話。季刊コミュポ14号初出。
内容は、別れた相手にもう一度恋をする瞬間を描いた純情ラブストーリー。
けれどもラブの力で万事解決とはいかないのが大人の複雑なところ。
(以下ネタバレ含む)
母親の直美に近づく男高橋は、話の都合上、悪者役をやっているけれど、間違ったことは何一つ言っていない。
本当の愛情とはなにか。
子供にアイスクリームをあげてユニコーンはいる・魔法で願いはかなうと繰り返すことか。
それともユニコーンなんていない。人生は魔法ではなく自分の力で切り開くものと諭すことか。
娘の将来を考えれば、直美はどう考えても高橋を選んだ方がいい。
もし作者の自分が現実に相談されてもそう忠告すると思う。
それじゃ仮に高橋と再婚したとして、直美は高橋を愛せるかな?
もっと言えば、高橋に恋をするかな?
高橋は生活力もあり大胆で頼もしい男だ。
けれども決してイカをくわえてプロポーズはしてくれないだろう。
父親の佐竹はいわゆるダメ男で、家族を養う生活力も別れた妻子を支える責任感もない。
だけどそんな佐竹のマンガを評価し、才能を信じた直美を高橋は理解してくれないんだ。
恋とはなによりも固有性に立脚した体験だ。
世界中でたった一人、他の誰にも代わりがきかないこの人、という固有性こそが恋の純真を輝かせる。
ユニコーンはいるの?
と娘に聞かれて、本当にユニコーンを見せてくれる父親は佐竹だけなんだ。
とはいえ直美はここでもう一度佐竹を選んでいいのかな?
同じ過ちの繰り返しじゃないといえるだろうか?
車を降りた母子が再び父親の元へ戻ったかどうかは作者もわからない。
ただ一つ確かなのは、アイスクリームを食べユニコーンを見たこの日を、幼い娘は決して忘れないだろうってことだけ。